有限会社オグショー・石井政之氏インタビュー

自動車を使った夢は果てしない。
「サーフボードを車に積んで海に行きたい」「家族で気軽にキャンプをしたい」
「車椅子でも、もっと自由に移動がしたい」
「“移動オフィス”として車で移動しながらで新たなビジネスに挑戦したい」


・・・これらすべての夢を叶えてくれるのが「ライフスタイルカー」だ。
今回私たちは、この「ライフスタイルカー」を提案する、
(有)オグショー ライフスタイルカー担当の石井政之さんに、お話を伺った。




<事業内容>
オグショーは、トヨタハイエース」日産「キャラバン」など自動車カスタマイズを専門とする。
ハイエース」は特に、広い車内空間に定評があり、ワンボックスタイプでは一番売れている車だ。工事現場で働く人などが大きな工具を積み込む車両としても一般的であり、街で見かける救急車などの車も、「ハイエース」をカスタムしたものが多い。


オグショーは元々、「ハイエース」へオートバイを詰め込む提案で、事業展開してきた。

代表の小栗伸幸氏は、元国際A級モトクロスオートバイのライダーだ。ワンボックス車内にオートバイを積み込んでの移動と、車中泊を繰り返す中で、「遊びを積んで出かける車」としてトランスポーターの自作を手がけるようになった。

そして彼は引退後、この経験をビジネスとした。現在はライダー、サーファー、スノーボーダーと、提案の幅を広げながら事業を拡大している。

その提案のひとつとして「ライフスタイルカー」が生まれた。


ハイエース」という車種は、20〜30万kmなら平気で走る。(一般的な車種であれば10万キロ走ればどこかしら不具合が生じるとのこと)175センチある筆者が悠々くつろげるほどの車内空間と、この丈夫な設計により、赤ん坊の世話から車椅子の持ち運びという、まさに「ゆりかごから老後まで」の提案ができる。


   

車内には防水の床が敷き詰められている。水をこぼしてもカビないし、錆びない。
これはサーフィンボードを詰め込む提案から生まれた発想だ。また、ベッドや机は、ボルト一つで取り外し可能である。「今日はキャンピングカー、明日はオフィス」などといったカスタマイズが手作業でできる。




<インタビュー>

 


――石井さんがオグショーで社会問題の解決を志したきっかけは


3年前、東京に住んでいた頃のことです。
オグショーで仕事をしている高瀬裕之という役員がいるんですけれども、彼と僕は、豊橋技術科学大学の同級生なんですね。彼は出張で東京に来ることも多く、わりとよく、連絡をとりあっていました。そのとき、「これからオグショーという会社を盛り上げていくために、何かいいアイディアはないか」という話をしていたんです。

僕はそのとき東京に住んでいましたから、漫画喫茶とか、ファミリーレストランで仕事をしてる人をたくさん見てきたんですね。そこで、「車の中で、ノートパソコンで仕事ができるようにすればいいんじゃないか」、「そういうものであれば僕も買いたいし、需要はたくさんあるんじゃないか」という話をしました。
それで縁があって、そのプロジェクトを進めるまとめ役になった、ということなんですね。

あれだけ広いハイエースとかワンボックスカーの空間を、アウトドアの趣味の人だけが使っているというのは、すごくもったいない。また、建築現場に従事している方だけが使っているのも、もったいないなと思ったんです。

あの広い空間があれば、移動中に育児をしてるお母さんが安心しておむつを替えられるし、ご家族に車椅子利用者がいても、車椅子をたたんで、一緒に旅もできるんじゃないかと思ったんですね。値段的にもそんなに高くないので、困っている人のための車として十分使えるし、オグショーの歴史・オグショーの技術があれば絶対できると考えました。



――もともと社会的な問題には強い意識があったのですか


そうですね。私は、いわゆるジャーナリストということでたくさん本も書いてきたんです。それで社会問題にはずっと関心を持ってきました。困っているひとを助けるような仕事として、書くことをしてきたんです。

社会問題というか、困っていることを解決する仕事というのは、やりがいがある。
オグショーの歴史は、趣味をもっと楽しむための商売なんですけど、その持ってる技術っていうのは、困っている人を助けるためにも十分に使える。そういう判断で、ここで仕事をしようと決心しました。





――ぬくもり工房(浜松の地場産業、遠州綿紬の製作展開)とのコラボの経緯を教えてください


オグショーは浜松の会社です。僕としては、「メイドインハママツ」という打ち出し方で、仕事をしたいなぁという気持ちがあったんですね。
浜松から日本中に、なるほど!という商売ができるというふうに伝えたかった。出来るかぎり、浜松でビジネスパートナーを見つけたいと考えたのです。

同じ技術同じ商品であれば、東京の取引先よりも浜松の取引先のほうがいい。ぬくもり工房さんは、浜松の伝統的な織物を復活させようとする、ベンチャー企業だった。ぼくたちも、ベンチャー企業のつもりなので、じゃあ一緒にやらないかな、と声をかけさせてもらって。
メイドインハママツという打ち出し方をすると、他のメーカーさんがまねしにくいのでね。



――では石井さんのお仕事を具体的に教えてください。


広報とかPR、それと、ライフスタイルカーみたいな新規事業の立ち上げです。

ぬくもり工房さんとコラボをした、などということで、周りの人に「えっ、すごいことやってるね」って思ってもらうこともPRだろうし、今回の社会起業支援サミットに参加していく、ってことも、PRです。おなじようなことは、恐らく誰もやっていません。

大きなメーカーが作る車椅子専用車両は大事ですが、一人では動けない障害者や高齢者とっては必要なんですね。しかも500万円以上かかる。一方で、あまり重症じゃないけれども、車が必要、と言う人もいる。そういった方たちに提案するためにも、こういった形で他社とは違う積極的な広報を行っています。




――社会起業支援サミットを通じて、市民の方々から支援されたいという点はありますか


私たちの活動をもっと知って欲しい、ということに尽きます。


ライフスタイルごとに、車を自由に変えられる商品がある、ということを知ってもらいたいんです。障害とかご高齢の方が家にいると、家のリフォームをすると思うんですね。
同じように車のリフォームを考えてもらいたいし、そういうことが出来る会社が浜松にある、ということを知ってもらいたい。ですから、障害者とか高齢者のいるご家族に、オグショーがこういうことをやっているよ、ライフスタイルカーを作って売り始めたよ、というふうに、広く伝えて欲しいですね。


これからの問題として、ライフスタイルカーというものをどんどんアピールしていくときに、僕たちが、会社として、ボランティア団体・NPO団体とどんどん出会う必要があるなと考えています。そういう出会いの場には積極的に出て行きたい。彼らとつながる場が欲しいですね。

そのときに、一企業として、きちっとした、支援をしていきたいなぁと思う。
他の会社にできないことを提供していくとか、もちろん、利益がちゃんと出るかたちでやりたい。例えば、ライフスタイルカーが、障害者や高齢者だけではなく,創業間もない社会起業家や会社経営者を支援するひとつの商品になっていることも知って欲しいです。


個人的に、社会起業家の方には「うちの車を使って日本中で仕事をしてほしいな」って希望があります。事業の立ち上げ時期っておそらくお金があまりなくて、事務所を借りられない。
そういうときに、うちの車で、移動しながらパソコンで仕事をするとか、新しい仕事のスタイルっていうのを、検討してもらえればありがたいです。



(インタビュアー:小林 文:杉村)


有限会社 オグショー http://www.ogushow.co.jp/
ライフスタイルカー  http://ogushow.co.jp/top/cat4/cat532/
石井政之氏ブログ   http://blog.livedoor.jp/ishiimasayuki/
石井政之氏の著作   http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%D0%B0%E6%C0%AF%C7%B7
           http://astore.amazon.co.jp/ishiimasayuki-22/250-9235370-6777033