Spice Cafe Bija  清川孝男氏インタビュー

「地球を救うカレー」の味って知っていますか?
そのカレーの中には、私たちも健康問題と社会の健康問題、
おまけに途上国の問題までもが、溶け込んでひとまとめにされていました。

というわけで今回は、2007年5月に地元浜松市カレーをメインメニューにしたカフェ「Spice Cafe Bija」を起業した清川さんにお話を伺いました。



<インタビュー>

・清川さんのミッションとは

「健康な食」を提供する仕事がしたいと思っているんですよ。
裏返していくと、今の食の事情にはすごくいろいろ問題になっていることがあるんですよ。
自分は、伝統的に時間をかけて良い素材を使って作る調味料を選んだり、有機農法を体験したりして、まずおいしくてしかも安全で、という食の世界があることを知りました。
そのときに、今普通に日本で暮らしていると、そういう食にはなかなか近づけないし身近じゃないっていうことも感じるようになったんです。
後に、家族の介護がきっかけで食事療法ってのをちょっと勉強したんですよ。
そこで食の重要性がだんだんわかってきて、
それをきっかけに自分が起業して、世の中に自分がこの世に生まれてきてやるべきことだとか、提供する価値があるとすればそれは「健康な食」を提供することだな、って選んだというよりは、感じるようになったんです。


・なぜ「カレー」を選んだのか

ニューヨークの大学院に行っていたときに「世界の不良」という授業を受けたんです。
その中で、世界中の半分以上の人は栄養不良だっていう話を聞いたんですよ。
世界の中で12億人くらいの人が食べるものがなくて困っている。
でも先進国ではまったく同じ12億人ぐらいが食べすぎでメタボなどで困っている。
その上、カロリー、エネルギーはしっかり取れているけど、ビタミン、ミネラルが足りてないって人はまた更に多い。
そういう人たちの数を合わせると世界人口の半分以上が栄養不良、っていうすごく歪んでいる状態なんですよ。

自分はもともとすごいカレー好きなんですけど、
勉強する中で、途上国の中で食べるものが少なくて困っている人たちは、アフリカだけでなくてインドとかバングラディッシュとかネパールといったカレーの国々、南アジアでも多いってのがわかったんです。
そこでカレーであったら、先進国では野菜中心で栄養価も高くてっていうものをカジュアルに普通に日常の中で人が食べやすい形で提供することができる。
また一方で、フェアトレードを通じてスパイスとかコーヒー紅茶を仕入れてカレーと提供することで、間接的に途上国の方々の支援もできるっていうふうにひらめいたんですよ。
それがアイデアのベースになって、今のスパイスカフェBijaっていう店に繋がっています。


・「レストラン」という事業を選んだ理由は

人が集まってそこで直接いろんなことを伝えたり、体験してもらえたり、メッセージ性を伝えるにはすごくいい仕事だと思うんですよ。

世界の中では、自分の時間をゆっくり持ってだとか、途上国の方だとか地域にも優しい暮らし方をしている人たちが、けっこういるんですよ。
エコロジカルに暮らしてるとかオルタナティブライフって言い方するんですけども。自分はそういう人たちのところを訪ねていくという経験もしていて、そういうライフスタイルとか考え方を伝えたいっていうのも、この店を通じてやりたいことなんですね。
食の問題プラスアルファで、Bijaっていう店として社会の問題を解決したり、何か役に立てたら、と思っています。
お客さんと一番近い接点なので、お客様と一緒に自分たちが思っていることだとか、いいなと思っていることを共有して、一緒に育てていくってことができるのが、リアルに場所を持っている飲食店の1番いいところだと思います。



・現在までの成果は

正直浜松でオーガニックとかフェアトレードって言葉自体も知らない方って結構いると思うんですよ。
メディアを通してだとか、お客さんに直接的な形でオーガニックとかフェアトレードっていうのをどんどん伝えているので、それは少しずつ広がっているかな、と思います。

ただ社会的に広がりや意味を持たせるには、自分だけじゃなくて、共有する思いのある人たちと繋がって一緒にアクションを起こすのが大事だと思うんですけれど。
そういう意味ではフェアトレードは、うちの店が開いてから、まわりのお店にも声をかけています。
たとえばフェアトレード月間にスタンプラリーをやって、
お店同士でそれぞれのお客さんが別のお店にいけるようにすることで、フェアトレードを知ってもらうきっかけを多く作っています。
この2年間で参加するお店がかなり広がっているんです。
それもある意味わかりやすい成果じゃないかなと思います。

あとは実際に数字として、うちがどれくらい地元のものやオーガニックのものを使っているかというのを数字にしています。
去年の4月の売上金額ベースで、国産の素材、地元の循環を使っているのが9割弱ぐらい。
あと半径20キロ以内の地元の有機農家さんと顔が見える関係で食材を仕入れているが、8割弱ぐらい。
あとは海外から持ってくるものに関しては7割弱フェアトレードのものを使っています。
ここまでやっているところは、日本全国見てもあまり他にはないんじゃないかと思います。

行っていることをオープンにしているので、少しずつ普及はしてる感じはします。
今月も全国紙の雑誌が2紙、店を取り上げてくれました。
地方都市で黙ってやっていても、なかなかそういう機会って多くないと思うんですよ。
取り上げていただけたって点でも、多少の評価をしてもらえてるのかな、と思います。




・今後の展開は

実は飲食店ではないほうに展開したいと思っています。

店を始める前に、社会的に意義を持つ食業界での会社について、事例を分析していたんです。
そこで成果を上げていたのは飲食店ではなくて、製造工業だったんです。
自分たちで商品を作って、それを自分たちのいる町以外にも売っていく、
メッセージもこめて売っていく、というやりかた。
BijaもBijaという名前でやるかどうかは別として、そちらに軸足を置いていきたいと思っています。

あくまで浜松で地元のかたに喜んでいただけるお店を作っていくってのは今後も変わらないんですけれど、
浜松とか地元とか社会的なところにこだわっているっていうのがメッセージとして込められた商品を浜松以外にも売ることで、
社会的に自分たちが伝えたいことを広めたり、それに問題の解決に近づきたいですね。
飲食店だけではどうしても場所に縛られるっていう限界があるので。
それを越えるためにも、飲食店を継続しながら商品開発をして、それを浜松以外にも、日本全国に売っていくってことをこれから始めて行きたい。


・現状の問題点、協力を求める点は

うちの店長やる人探しています。
1年後に自分は店長から降りたいと思っているんですね。
飲食店を越えた展開の部分に関して軸足を置きたいなと思っているので。
まずは飲食店という、人と直接交流できて、お客さんの喜びも直接肌で感じられるところをやってみたい、
その後、やっぱりこれからスパイスカフェBijaって店をきっかけにして、食に軸足を置いて広がっていく、我々がやっていくことを一緒にやりたいって人に、
是非うちで一緒に働いて欲しいと思いますね。
限定ひとりです(笑)

外部的な話としては、正直このスパイスカフェBijaって店をはじめてみて、
自分が当初想定していたよりも、オーガニックとかフェアトレードだから来てくれるお客さまがすごく少ないんですよ。
これが東京だったり名古屋だったり大阪だったりすると、たぶんメッセージ性だけて来てくれるお客様がいると思うんですけども。
浜松は違っていて。

自分たち商品を提供することで、お客様にもいいなって思ってもらったり、知ってもらったりってことをやっていかなくてはいけないんですね。
自らそういった情報を入れて、一歩踏み出して関心を持ってくれる方はまだまだ多くないので、
自分たちも情報発信をこれから続けていきますけども、
好奇心を持って、いろんなことに興味もってくれる人が増えたらいいなと思います。
別にこれはうちみたいなカレーとか食の問題だけじゃなくて、
多分世の中っていろんなことがあると思うんです。
で自分の目の前の関心だけじゃなくて、ちょっと知ることから始まって、いろんなことに関心持って行動とってもらえたらすごく嬉しいなと思います。



(インタビュアー、書き手:斉藤@三度の飯よりカレーが大好き☆)

Spice Cafe Bija:http://bija.jp/